古い家が老朽化していて、地震に耐えられるか心配……
少子高齢社会で家が余っているこの時代、空き家となった木造住宅が放置されているケースが目立ちます。
そんな古い家で問題となるのが、巨大地震に耐えられるか?(耐震性)という問題ですね。
いつどこで起こるかわからない巨大地震に備えるためにも、我が家の耐震性を見直してみましょう。
このサイトでは古い木造住宅の耐震リフォームにスポットを当てて、
- どんな家が耐震性に問題ありなのか?
- 耐震リフォームの流れ
- 耐震改修工事の費用相場
といったテーマで解説していきます。
耐震診断・耐震リフォームとは?
地震の多いわが国では、建物が地震でも壊れない構造を持っている(耐震性)が重要です。
新築であれば、建築前の確認申請や竣工後の完了検査などで専門家がチェックするので、ほとんど問題ありません。
ただ建ててから何十年も経っている既存住宅はどうでしょうか?
経年劣化などで主要構造部が傷んでしまうと、万が一地震が起きたときに倒壊してしまうかもしれませんね。
そのような事故を防ぐため、既存の建物に耐震性があるか?というのをチェックするのが耐震診断と呼ばれるもの。
建物の専門家(建築士)が設計図面や現況を確認することで、その家の耐震性を判断します。
もしこの耐震診断で問題ありと判断されたら、何らかの対策を講じなければいけませんね。
建物の耐震性をアップさせる工事を、耐震リフォーム(耐震改修)と呼びます。
柱や基礎、屋根などの主要構造部を補強してあげることで、巨大地震がきても耐えられるようにするのです。
どうして耐震リフォームが必要なの?
耐震リフォームの必要性をひと言で述べるならば、命を守るためですね。
ここ十年間だけ見ても、
- 平成23年(2011年)東日本大震災
- 平成28年(2016年)熊本地震
- 平成30年(2018年)大阪北部地震
- 平成30年(2018年)北海道胆振東部地震
- 令和3年(2021年)福島県沖地震
日本列島各地で巨大地震が起きています。
そんな巨大地震から私達の生命を守ってくれるのが、住宅などの建物。
したがって建物の耐震性を高めるためのリフォームは、命を守るために欠かせない工事だと言えますよね。
大地震で倒壊の危険性がある家とは?
建物を建てるときは、建築基準法に則って設計したかどうかを確認申請でチェックします(一部例外あり)。
建築基準法には厳格な耐震性の基準(耐震基準)があるので、きちんと確認申請をクリアしていれば、耐震性に問題ないと言えます。
ただこの建築基準法も年を経るうちに改正が進んでいます。
耐震基準についても何度か改正があり、
- 1981年(昭和56年)
- 2000年(平成12年)
と2回にわたって大きく見直されています。
特に1981年は許容応力度計算・保有水平耐力計算というプロセスが加わり、非常に大きく基準が変わりました。
1981年より前に建てられた建物を旧耐震基準、それ以降を新耐震基準と呼ばれているくらい、不動産業界でも区別されています。
この新耐震基準で建てられた住宅は、その後に発生した阪神淡路大震災でも倒壊が少なかったということで、実際の巨大地震における耐震性を実証した形ですね。
もしあなたの家が昭和56年以前に建てられたものなら、旧耐震基準である可能性が高いです。
つまり巨大地震で倒壊するリスクが高いと言えるでしょう。
もし心当たりがあるのなら、なるべく早く耐震診断を受けて耐震性をチェックしてもらいましょう。
耐震改修の流れ
耐震改修工事の大まかな流れを図にしてみました。
この流れで説明していきましょう。
耐震診断|最初に一般診断法で倒壊する危険性を判定する
まず旧耐震基準の建物などを対象に、耐震診断を行います。
耐震診断は建築士などの専門家が耐震性能を評価すること。
まずは図面や外観調査をもとに診断する一般診断法を行い、総合評点をつけます。
この総合評点をもとに、建物が地震で倒壊する危険性があるか否かを判定するわけです。
〜耐震診断でわかること(診断書の読み方) | 耐震診断について|木耐協は耐震診断・耐震補強・耐震リフォームの工務店ネットワークより引用〜
この総合評点で1.0以上であれば倒壊の危険性は低いので、耐震改修工事を行う必要はありません。
一方1.0未満の評点であれば、すぐに耐震改修を検討したほうが良いでしょう。
その場合は専門家による精密診断法により、具体的に補強する部分や補強方法について検討していきます。
精密診断法では壁を一部壊して構造部材の調査を行うので、リフォームすることが前提の調査方法ですね。
耐震設計
前述の耐震診断の内容を踏まえて、どのように耐震性能をアップさせるか?
この段階を耐震設計と呼びます。
基本的に耐震診断を行った専門家によって、引き続き耐震設計が行われるのが通常の流れですね。
耐震改修|金物で接合部を補強する
実際の耐震改修工事には、様々な方法があります。
ただ木造住宅の耐震改修工事では、柱・梁・土台などの接合部分を補強することが一般的ですね。
一般的な木造住宅では、上図のように複数の部材が組み合わさる構造になっています(軸組工法)。
この構造の耐震性で問題となるのは、部材と部材をつなぐ接合部分。
この接合部分を補強するために取り付けるものを、一般に耐震金物と呼びます。
耐震金物の一例を挙げると、下図の通り。
耐震改修工事では主に、このような耐震金物を取り付けることで建物全体の耐震性をアップさせることになります。
改修せずに建物を取り壊す(除却)
- 老朽化が進んで耐震改修工事ができない
- 新たに建て替えた方が安い
- もともと空き家で利用する予定がない
こんなケースでは、耐震改修ではなく家の取り壊し(除却)を選択することもあります。
老朽化が進んだ危険な空き家を放置しておくと、所有者が罰せられることもあります。
もし空き家が倒壊して人的被害が出てしまったときは、莫大な損害賠償責任を追うことも。
空き家がもたらす損害は所有者が賠償責任を負わされる可能性があります。 損害賠償額が数千万円から数億円と非常に高額になるケースも想定されるので、空き家・空地の所有者は、他人に危険を及ぼさないよう、しっかりと管理を行う必要があります。
特に理由がないのなら、早めに取り壊しするのが望ましいですね。
耐震改修工事の費用相場
それでは耐震改修で必要な費用相場はどれくらいなのか?
流れに沿って見ていきましょう。
耐震診断
まず最初に行う耐震診断の費用相場は以下の通り。
一般診断法 | 129,000円 |
---|---|
精密診断法 | 251,000円 |
この相場表は延36坪程度の木造住宅を想定しています。
建築当時の図面がない等のケースでは、別途費用が発生する場合があります。
耐震設計
耐震設計の費用は建物の規模等で異なりますが、おおむね一棟あたり30万円程度となっています。
2.STEP2 補強設計:木造住宅の耐震化:進めよう耐震化:東京都耐震ポータルサイト
この耐震設計には図面の作成や構造計算などの費用が含まれています。
耐震改修工事
実際の耐震改修工事は
- 建物の状況
- 補強する部位の数
- 敷地や前面道路の状況
といった条件に左右されます。
ただ一般的な相場をみると、100〜150万円というケースが多いようですね。
木造住宅の耐震改修の費用|(一財)日本建築防災協会|建築物の防災並びに維持管理制度・技術の調査・研究。資格講習、耐震チェックプログラムの紹介。
以下に耐震改修工事費の見積もり例を挙げてみました。
この耐震改修工事と同時に内装リフォームなどをする場合は、別途費用が上乗せされます。
耐震改修で活用したい補助金
阪神淡路大震災や東日本大震災などの巨大地震が多発する日本。
国や自治体などで地震に備えた耐震改修について、補助金や助成金を支給しています。
ほとんどの市区町村で、耐震改修に関する補助制度があると言っても過言ではないでしょう。
最初の段階である耐震診断を無料で受けられる、という施策をとっているところもあります。
まずは住宅が存する自治体でどんな制度があるか?チェックしてみましょう。